C'est la vie!
「グロ゛ウ゛さん゛…」
「こんな時間にレディが一人こんな暗い場所に居るのは感心しないな」
クロウさんは呆れたように吐息をついて腕を組むと、バスルームの壁に寄りかかった。
確かにバスルーム内は明かり一つついてないし、誇りっぽいし、かび臭いし、蜘蛛の巣なんかも張ってる。
いかにもデそうな雰囲気に、普通だったら絶対近づかないってのに…
零くんが寝静まっても、あたしは悲しみと不安で眠ることができなかった。
で、怖いのも気にせず一人抜け出してここに来たってわけ。
だってすぐ隣で泣いてたら、また零くんを困らせるに決まってる。
「レイと喧嘩かい?」
クロウさんに聞かれて、あたしはぎこちなく頷いた。
クロウさんはあたしを部屋に連れ戻すかと思いきや、長いバスタブの向かい側に入り込んできて、腰を降ろした。
ちょっとびっくりして体を後退させるも、クロウさんはそれ以上何かをしてくる様子はない。
「何があったか、話してごらん」
宝石のような青いきれいな目が優しく揺れて、あたしはまた涙で溢れそうになる目元を押さえながら、クロウさんに頷き返した。
洞穴探検の一部始終を聞かせると、
「ほ~う、なるほどねぇ」とクロウさんは顎に手をあて頷いている。
「…クロウさん…なんで零くんにはあの音と光が見えなかったんだろう…どうしてあたしだけだったんだろう…」
鼻を啜りながら…ってかまたも新発見!
幽霊でも鼻水って出るんだね!
って、そんなこと考えてる場合じゃないって。
「どうしてレイには見えなかった―――か……
それはね」
クロウさんはゆっくりと口を開いた。