C'est la vie!



壁が、廊下が、天井が―――かつての色を取り戻していく。



白、アイボリー、クリーム色。


赤、紅、ワインレッド―――


茶、赤茶、ダークブラウン…


壁に掛けられた絵画や蜀台、天井からぶら下がってるシャンデリア、窓の外の景色も。





屋敷が―――甦る。




あたしも零くんも言葉も出せずに驚いたまま、思わず身を寄せ合い、まるで色のカーテンが引かれていくさまをじっと目を開いて見つめていた。


あたしたちのすぐ傍ではクロウさんが相変わらずの余裕顔で腕を組んでいて、お屋敷の廊下を目配せした。


クロウさんの視線の先を見ると、


一人の女の人が二人の子供の手を引いて廊下を走っていった。


女の人は…見たこともない人。ブリトニーさんでも、夢の中で見たユウキさんでもない。


キィ


重圧的な玄関の扉が開いて、





「ただいま」





教科書の写真でしか見たことのない、くすんだ灰色の軍服に身を包んだ


クロウさんが姿を現した。


「おかえりなさい、あなた」


女の人は声を震わせながら、クロウさんに駆け寄り、


「おかりなさい、あなた!」


今度ははっきりと泣き声に変えて、クロウさんの手を取った。







< 164 / 194 >

この作品をシェア

pagetop