C'est la vie!
「と、まぁゴースト界の私の事情はさておき、
私がアスミの訃報を聞いても
生きることを諦めなかったのは―――
このときの妻や子供たちの存在があったからだ」
クロウさんが優しく目尻を下げて、
小さな子供(男の子だ)を必死に抱きしめているもう一人のクロウさんを指差す。
軍服姿の、戦争帰りのクロウさんは今にも泣き出しそうに必死に子供を抱きしめて、
『I've been wanting to see you,Jr.』
と囁いて、幸せそうに笑顔を浮かべていた。
「ね、ねぇ零くん。クロウさんなんて言ったの?」思わず零くんの袖を引っ張ると
「“ずっと会いたかったよ。ジュニア”
だって」
ジュニア……やっぱり、あの子供がクロウさんの子供……
クロウさんは愛する人を亡くしたけれど、クロウさんを待っている人もいたんだ。
「そうだよ。君たちにだって待っている人は居る。
君たちが生きることを望む人が一人でもいるならば―――
それだけで人は前に進める
零、君にはすぐ近くで君の手を握ってくれている明日未が居る。
家族がいる。友達がいる。
君の手を離さずに懸命に握り締めて、
君の還りを待っている―――
一歩を踏み出すことを怖がるな。
君が前に進めば、どんなことがあろうと受け止めてくれる人は
確かにあの世界に存在しているのだから」
クロウさんが屋敷の玄関を指差した。
あたしが開けても、外に踏み出せなかった扉。
ギィイイ
黄金色に光り輝く扉が―――…ゆっくりと開く。