C'est la vie!
「“C'est la vie!”てさ、
ああ素晴らしき人生!これぞ人生!って意味があるんでしょ?
もうあの香水瓶を持って無くても、
いつでも近くで意味を感じれるから―――」
そう言って零くんはあたしの手を強く握り返してきた。
「俺を必要としてくれてる人が近くに居る。
俺が大切にしたいって想う人が近くに居る―――
これぞ“素晴らしき人生”」
零くんは明るい笑い声をあげてあたしに微笑みかけてきたけれど、
またもすぐに恥ずかしそうに顔を逸らす。
「キザ……だったかな」
「うん♪クロウさんそっくり♪さっすが血縁者」
あたしも笑い返すと、
「あの人とは一緒にしないでよ」と零くんは唇を尖らせた。
でもまたすぐに機嫌を直したようにあたしの手を引いて、あたしと同じ歩調で階段を下りる。
「うそ。キザじゃないよ。
すっごく嬉しい」
あたしも零くんが隣に居てくれるだけで、
その意味を感じ取ることができるよ。
キィ
パタン
あたしたちが手を繋いでお屋敷から出ると、扉は勝手にしまった。
「若者たちよ。人生を楽しみなさい」
お屋敷の中から
クロウさんの楽しむような弾んだ声が
聞こえた。