C'est la vie!
「あー…ホントだ…」
零くんもその肖像画を見上げて、目を瞬いた。
女の人は誰だか分からないけど、剥げ落ちた塗料の下部分にはうっすらと微笑む口元が描かれていた。
よく分からないけど……美人っぽい。
それに和服を着てるってことは日本人ってことだよね…
「……あの人の奥さん……かな?」
零くんが首を捻り、
「えぇ~?あの人結婚してたの?」
あたしは零くんの言葉に賛同できかねた。
「だって独身だなんて一言も言ってなかったじゃん」
「そーだけど…。でもあの人が妻帯者って何かピンとこないんだよね」
「あ~まぁ…軽そうだしね」
と、零くんは気の無い様子。
でもあたしはその肖像画から目が離せなかった。
零くんの言うとおり……奥さんなのかも。
確かに、あの人妻帯者って感じじゃないけど、だけど二人の微笑みがとっても温かくて―――
幸せそうだったから。
あたしはちらりと零くんを見た。
零くんは心臓探しを再開させて、小さな一輪挿しの花瓶なんかをひっくり返している。
って言うか、零くん??どー考えたってその小さな花瓶に、あの心臓は入りませんよね??
ああ…突っ込みたいところは満載だけど……
あたしを優しく見守るような絵の中のクロウさんの視線が―――
零くんのそれとまた重なった。