C'est la vie!
さっき部屋の窓から見えた西日は、廊下に出るとますます傾いて赤と紫の微妙なコントラストを滲ませていた。
「ヤバ!!本当にタイムリミットだよ!」
焦ってひたすらに隣の部屋を開けようとしたあたしの手を、零くんが掴んで引き止めた。
「待って。ここまで来たらもう闇雲に探すのは時間の無駄だ」
言ってることはごもっともですが……
ってか零くん??冷静になるの遅すぎだよ!!
今までの“振り”は何だったのよ!
と怒ってても仕方ない。あたしは零くんの言葉に耳を傾けた。
「クロウさんが隠しそうな場所、思い浮かばない?」
そう聞かれて、
「う゛~ん…」あたしは首を捻った。
あの人のよく出没する場所……リビングとか?書斎とか??あたしが寝てる部屋なんかにもたまに出る。
「だめだ、あの人神出鬼没だもん。いっつもありえないところに現れるんだよね」
「キッチン、トイレやバスルームなんかも探したけど、見当たらなかったし…」
零くんも考え込んで首を捻っている。
クロウさんは……
たまに意味深そうにあたしを見る。
何でも見透かしてそうなあの淡い透き通るような瞳で、じっとあたしを見据えて、
そして口元にちょっと淡い笑みを浮かべる。
だからかな。
あの人が―――考えもなしに意味もなしに、まったく無関係の場所に隠すとは思えなかった。