C'est la vie!
「てか第一夫人は誰なんですか?そんなに妻を迎えてどーするんですか?」
あたしは怖いのを通り越して、もう半ばヤケクソと言った感じで腕を組んだ。
クロウさんはブリトニーさんを放すと、ちょっと顔に翳りを浮かべて額を手で覆った。
「残念だが、第一夫人は決まった人が居る。
あの場所は―――あの場所だけは、誰にも譲れないんだ」
いつになく真剣な表情と声のクロウさん。
はじめて見る少し寂しそうな表情が―――またも零くんに重なった。
あの、窓辺の零くんの―――寂しそうな横顔……
そして思い出した。
あの肖像画に描かれた女の人。和服姿の―――…
クロウさんは幸せそうな笑顔を浮かべていた。
いつもの似非くさい笑顔じゃなくて、心からの笑顔に見えた―――
直感―――
あの人は…………きっとクロウさんを残して、一人成仏してしまったんだ。
「だからって第二夫人を作ります!?」
それとこれとは別!
あの和服美人…(顔を見てないけどたぶん美人ぽい)が先に成仏しちゃったからって、またこんなきれいな人をすぐに奥さんに迎えるなんて。
しかも後妻じゃなく、第二夫人かよ!同時進行かよ!
「HAHAHAHA!恋というものは私にとって生きるエネルギーさ♪」
「生きてないじゃん!もう幽霊じゃないですか!」
「Non,Non!ゴーストと呼びたまえ」
「どっちだって意味は同じでしょ!」
あたしの声とクロウさんの笑い声が暗闇に響いて、
あたしは、さっき成仏したくない…なんて一瞬でも思ったことは間違いであったことを
思い知らされた。