C'est la vie!


「ねぇ部屋に戻る前に図書館寄っていかない?もしかしたら何か分かるかも」


前を歩く零くんに呼びかけると、あたしの手を引いたままの零くんがちょっと振り返った。


「それはいいかもね。ついでにここから抜け出せる方法も調べよう」


零くんが微笑みを浮かべてあたしの手を引く。



零くん―――……


零くんは、優しくて―――すごく頼れる。




あたしは一人じゃない。


最初は幽霊になっちゃってどうしようかと不安だったけど、


零くんが居てくれて―――本当に良かった。




―――


天井まで伸びた洋風の洒落た本棚の中にはさまざまな本が詰まっている。


移動式のはしごがを使って、図書館の高い本棚の本を片っ端から広げていく。


幽霊なんだから浮くこともできるのに、零くんは何故かはしごをよじ登っている。


「だって浮くと疲れるし」


疲れるって幽霊なのに!?


と突っ込みたいのをこらえていると、零くんは上の方からあたしを見下ろして、


「女の子は危ないから下の方ね」とにっこり微笑んでくれる。


零くん……


キュン♪優しいね!


「スカートの中が見えたら色んな意味で危険だからね♪俺はあれだけど、クロウさんはね~。あのひと文字通りとんできそうじゃない??」


優しい……?


前言撤回!


「零くん!上の方しっかりお願いね!!」


あたしはしっかりと上の方を零くんにお願いして、


近くの本棚に手を伸ばした。


ほこりとカビの臭いに何度も咳き込みながら、それでもあたしたちは本を開いた。


少しして


「結城さん!」


上の方の本棚を見ていた零くんに呼びかけられて、あたしは顔を上げた。


零くんはいつになく真剣な声。いや、本人いつだって真剣なんだろうけどね。


何せ不思議くんだから。


それでも気になってあたしは零くんを見上げた。


「何!もしかして脱出の方法が載ってた!?」



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