C'est la vie!
零くんは一冊の古びた本みたいなものを手にしていた。
「日記みたいだ。1900-1905と書いてある」
はしごを伝い降りて、零くんはその古い日記帳を見せてくれた。
茶色い色はくすんで全体的に黒っぽく、表紙を開くと以前は白い色をしていたのであろうページは薄い茶色に色褪せていた。
見出しに
Henry.C(1900-1905)と筆記体の英語で記されている。
「ヘンリーって誰のことだろう??」
あたしが零くんを見上げると、
「さぁ。でもCってクロウさんのCじゃない?1900年って言うと今から112年前だ。大体年代的にあってそうだし」
た、確かに。あの人ははっきりとした幽霊歴を言ったわけじゃないし。
「ってことはクロウさんの名前!?」
てっきりクロウってのが名前だと思ってたけど。あれは苗字だったってこと??
「まだ決まったわけじゃないけど。内容を読めば分かるかも」
零くんはあたしの手から日記帳を取ると、ぺらぺらとめくった。
人の日記を見るのは良くないことだしうしろめたいけど、でもこれで脱出方法が分かれば!
そんな思いであたしはごくりと唾を飲み込んだ。
だけど百年以上前の直筆だし、インクが滲んでてその大半が読めない。
「1,14 1900.Giaco……この後はmかな。nかどうか分かんないや。そのあとはPuc……?」
あたしが読み上げると、
「Giacomo Puccini(ジャコモ・プッチーニ)だ。確かこの年はプッチーニがイタリア・ローマの劇場で『トスカ』の初演された年だ」
零くんが淡々と説明をくれた。
「へ、へぇ。物知りだね」
ってか零くん凄い!頭良いね!!
その後も「case Kawamata」は2月13日の日付け。
「これって川俣事件!足尾鉱毒事件の被害者農民と警官隊の衝突事件だよ」
あたしが指差すと、
「へぇさっすが受験生。詳しいね♪」と零くん。
あ、あたし役に立っててる!?