C'est la vie!
零くんは自分の話題から話しを替えるように、日記をぺらぺらとめくった。
「このユウキさんて人は、ヘンリーさんの会社の、下請け会社で働いている従業員の娘さんらしい。
学校の先生だったユウキさんが、ヘンリーさんに日本語を教えるのがきっかけで知り合ったみたいだよ」
「へぇ。何かロマンチックな出会いだね」
「まぁそうだね。だけどヘンリーさんはこの頃取引先の社長のお嬢さんとお見合いをしていたみたいだけど、ユウキさんのことを好きだったみたいだ。
日記に書いてある」
ユウキさんは―――下請け会社の従業員の娘。
一方は取引先のお嬢さん。
身分の差―――……
あたしは零くんを見上げた。零くんも少しだけ悲しそうに瞳を揺らし、ぺらぺらとページをめくる。
「彼は結局、ユウキさんと添い遂げることはできず、この取引先のお嬢さんとの縁談を彼のお父さんによって無理やり勧められたようだ。
その頃の反抗心と、ユウキさんへの熱情、そして抗えない現状に苦悶している様子が分かる」
ヘンリーさんは……悲しい恋をしたんだ。
もし……
もしもだよ??
ヘンリーさんがクロウさんと同一人物だとしたら、クロウさんはこのユウキさんに会いたいためにこの場に留まってるの?
幽霊になっても想い続けた人を―――ずっと待ってるの?
成仏してもう会えないかもしれない人をずっと―――……
百年以上も。
そんなの
そんなの悲しすぎるよ。