C'est la vie!
はじめて経験する光景にあたしは唖然。
怖いと言うよりも、ただ驚きの方が勝った。
ガタガタッ
本棚はあたしの予想も付かない動きを見せて、右へ左へ移動している。
移動する早さに耐えられなかったのか、中から本が飛び出してきた。
バサバサッ
「うわっ」
「キャァ!」
本があたしたちの頭の上に落ちてくる。
カラスの攻撃もゆるまない。
てかクロウさん!かよわい乙女になんてことしてくれるのよ!!!
(って、クロウさんの仕業かどうか分かんないけど)
「結城さん!あっちへ!」
零くんが小さな棚の影を指し示して、あたしをそこまで逃げるように促した。
確かにあの場所ならカラスも入り込めないだろう。
「れ、零くんは!」
「俺がおとりになるから!早く」
せかされるように背中を押される。
よろけて一歩前に出ると、それを見計らっていたように四方の棚が動き出した。
へ!!?
あたしと零くんの間に棚が移動してきて、零くんの姿が隠れそうになる。
零くんはあたしを守るために、カラスの攻撃をくらっていて、それでも棚の異変に気付いて慌てて手を差し伸べてくる。
「結城さん!」
あたしも手を差し伸べた。
「零くん―――!!!!」
あたしたちの間を、まるで隔てるように押し迫ってくる本棚の隙間から手を差し伸べて、
そのふしに零くんの大事にしていたセラヴィの香水が―――
彼の制服から零れ落ちる。
セラヴィ―――……
あたしはセラヴィに一瞬だけ目を向けたけれど、零くんはそれにかまわず必死にあたしに手を伸ばしてきた。
一瞬だけ零くんの伸ばした指先があたしの指先に
触れた。
あたたかい感触がした。