桜哀歌
大晦日
はあ、と吐いた息が白く濁り、夜の闇に溶けていった。

骨の芯まで染みるような冷たい風に、小さく身を震わせる。

「……寒いねぇ」

横で歩く由里が呟く。

そうだな、と返したその瞬間。

ごーんごーん。

今年の終わりを告げる除夜の鐘が、鳴り響いた。


< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop