桜哀歌
「あの、すいません。女の子見ませんでした? 俺と同い年の子なんですけど」

「いや、俺があんたを見つけた時にはもういなかったぜ。なんだ、恋人か?」

「妹なんです…どうしよう、どこ行ったんだ…?」
「案外、先に家に帰ったのかもしれないぞ」

「あ、そうですね」

俺は頷き、立ち上がった。
そして石段から眼下を見下ろし……目を見開く。

広い砂利道。

木造の家。

古臭い……まるで時代劇のセットみたいな、建物。
歩く人達は皆、着物姿。

「ここは…どこですか」

「は?」

男が眉をひそめ、答える。

「江戸だよ。決まっるじゃねぇか」


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