名前の無い物語
…祐希、よくあそこまでなりきれるなぁ
柚歌は初めて祐希を尊敬した
自分には、あそこまでは無理かもしれない
「とりあえず、あんな風に聞けばいいんだろ?あ、あそこの占い師は?」
海の指差した先には
道路の隅っこで小さな占い屋を出しているおばさんがきた
「そうね。何か知ってそうだし。」
吉野は二人を止めに行き
海と柚歌は占い師の下に向かう
「あの、すみません…。」
海の言葉におばさんは顔を上げた
「いらっしゃい、また珍しいお客さんだ。」
「?」柚歌と海は首を傾げる
お客が来たのは久しぶりということか?
いや、それなら「客なんて珍しい」って言うんじゃねぇか?
「二人して…心に闇を抱えてるなんて珍しいのぅ。」
「「!!」」二人同時に反応した
心に、闇を抱えている…?
「それに、二人とも闇が濃い…随分深く悩んでいるねぇ。」
ニヤリ、と笑ったおばさん
マズイと海は本気で思った
「…あんた、何を「海ー柚歌ー!」