名前の無い物語


うーん…
 


見れば見るほど普通のスプーンだ
それに最近スプーンで困っていた記憶も無い


スプーンは十分間に合ってるし
新しい物も必要ないし


「…。」


少し悩んで出した結論




後で警察に届けよう



差出人の名前も無いし
もしかしたら届け間違えたのかもしれない
スプーン一本なんて良い値段では売れないしな




ハァ、と溜め息を吐いて吉野はもう一度封筒にしまう
外を眺めると、真っ青な空が視界に入った



何気ない、平和な光景



けど、何とも思ってなかったこのスプーンが
始まりの合図だったなんて



吉野はまだ気付いていなかった


< 16 / 595 >

この作品をシェア

pagetop