名前の無い物語
うーん…
見れば見るほど普通のスプーンだ
それに最近スプーンで困っていた記憶も無い
スプーンは十分間に合ってるし
新しい物も必要ないし
「…。」
少し悩んで出した結論
後で警察に届けよう
差出人の名前も無いし
もしかしたら届け間違えたのかもしれない
スプーン一本なんて良い値段では売れないしな
ハァ、と溜め息を吐いて吉野はもう一度封筒にしまう
外を眺めると、真っ青な空が視界に入った
何気ない、平和な光景
けど、何とも思ってなかったこのスプーンが
始まりの合図だったなんて
吉野はまだ気付いていなかった