名前の無い物語
その声に二人は同じ方向を見る
「柚歌、気が付いたか?」
目が覚めた柚歌は頭を抱えながらゆっくり立ち上がる
「ごめん、遅くなって。」
「俺たちも今覚めたばっかだし。」
「それより、新しい世界に着いたみたいだ。」
「新しい世界?」柚歌はようやく顔をあげた
その瞬間、柚歌のは目を丸くして驚いた
「柚歌?」
「…!」
「オイ!」海の言葉を無視して
柚歌は柵の方に走り出す
丘の上に立っているこの公園
ここから、街全体を見渡す事が出来た
「…嘘。」
嘘だと、そう思いたいのに
目に入る、忘れるはずのない時計台
「柚歌?」
吉野達の声に
柚歌は振り返ること無く
「ここ…私の世界なの。」
震える声でそう告げた