名前の無い物語
まるでここに来ることが分かっていたように
語り部は動揺の色を1つも見せていなかった
「そろそろ来ると思ってたよ。私に聞きたいことがあるんでしょ?」
全て彼女には筒抜けだった
語り部は歯車から手を離す
「…君は分かってたんでしょ?
デュアンテの事も、長老会の事も…この世界に、何が起こってるかも!」
柚歌の言葉に
語り部は一度息を吐いて
「…黙ってた事は謝る。でも、事が起こるまでは禁句だって長老会で決まってたから。」
「…君が、長老会のメンバーだったなんて…。」
「違うよ。」語り部は首を横に振る
柚歌は目を丸くした
「私は只の語り部。今回の物語を紡ぐ者。
長老会と関係はあるけど、メンバーじゃない。
…この世界のメンバーは、別にいる。」