名前の無い物語
「…完全に見失ったな。」
道の真ん中に立ち尽くしながら
海は吉野に言った
あれから、何とか柚歌を追いかけようと試みた二人
が、土地勘の無い彼らが振り払われるのは簡単だった
「まぁ…俺達この世界の事知らねぇしな。」
「何で先に言わねぇんだよ吉野。」
海の言葉に吉野は苦笑いを浮かべた
その様子を見て、海は安堵の息を吐く
…コイツ、また1つ人らしくなったな
前の世界で祐希達の影響を受けたからか?
コイツは世界を巡る度に、本当の自分を取り戻してるのかもしれない
「あ、あそこ!人がいるぜ!!」
吉野が指差した先に
確かに一人の少女が立っている
しかもよく見たら…柚歌と同じ制服を身に纏っていた
「行こうぜ!!」
二人は一気に走り出す
「あの…すみません。」