名前の無い物語
只一人納得していたのは
語り部だけだった
「やっぱりって…。」
「どういうことだよ…?」
吉野と海は語り部を見つめた
彼女は何か知っている…?
「あの子は優しすぎるから…。きっと、こうすると思ってた。」
「っ、何だよ!何が…ーー海?」
今にも問い詰めそうな吉野の肩を海は掴む
海は語り部を見据えた
「お前…長老会の関係者だろ?」
「えっ?」海の言葉に吉野は目を丸くした
逆に、語り部は笑った
「何でそう思うの?」
「俺達を見ても、全然驚かねぇし…むしろ、前から知ってるみたいだからな。
長老会の差し金で間違いない。」
海の言葉に
語り部はクスリ、と笑った
「…さすが、場数を踏んでるだけあるね、二宮君?」
面白そうに笑った緑色の瞳が
海と交わる
「これは柚歌も誤解してたけど…私は長老会の正式メンバーじゃないわ。
今回の事件に関わってるけど…私は物語を紡ぐだけの只の語り部なの。」