名前の無い物語
「語り部…?」二人は首を傾げた
長老会のメンバーではない
けど、今回の事に関わっているのは確かだ
「柚歌の事はよく知ってるよ。まるで自分の事みたいにね。」
「じゃあ、柚歌がどこに行ったのか分かるんだよな?」
吉野の言葉に、語り部の視線は吉野に向かう
何の感情も籠っていない、人形のような瞳
一瞬、吉野は肩を震わせた
「…知ってるよ。けど、今の君達じゃこの世界は救えても柚歌は救えない。」
「「!?」」二人は目を丸くした
語り部の言った意味が、二人には理解出来なかった
「どういう意味だよ?」
「落ち着け吉野。焦ったって意味ねぇって。」
海に宥められて、吉野は「ごめん。」と謝った
…コイツ、意外にせっかちなんだな
海は密かに思った
語り部は、そんな二人を交互に見て
「…君達は、柚歌の心の闇について知ってる?」