名前の無い物語
そういえば
柚歌…時々悲しそうな顔をしていた
まるで、誰かに謝っているように
いつも空を見上げていた気がする
「…あんたは、知ってるんだろ?」
沈黙を破ったのは
吉野だった
「あんたは柚歌と関わりがあって、全部知ってるんだろ?
なら…教えて欲しい。柚歌に、何があったのか。」
今までの事を悔いていても仕方ない
なら、同じ過ちを繰り返さない為にも
前に進むしかない
吉野の強い瞳を見て
「…純粋な心、か。」と語り部は小さく呟いた
そして、初めて面白そうに
楽しそうに、語り部は笑った
「…始まりは、二年前。」
ゆっくりと
語り部は言葉を紡いでいく
「過去に起きた過ちから、この世界は滅びる運命にあった。世界を終わらせる為に、ある力を受け継いだ少年がいたの…。
彼の名は間宮空。柚歌のクラスメートだよ。」