名前の無い物語
吉野と海は目を丸くした
今、語り部から言われた真実は
すぐに理解できるものではなかった
「だから今この世界は存在してる。この世界は…いきなり巻き込まれた不運な少年の命で成り立っているんだよ。」
語り部はまた無表情に戻った
「…たぶん、君と似たような状況を経験してるよね、二宮君?」
向けられた視線に
海の表情は曇った
“チーム”
すぐに浮かんだ人物は、ソイツ等たった
「でも、君には同じ境遇を分かち合える仲間がいた。一緒に戦ってくれる、仲間がいた…。
でも。空は違う。大切なものを護るために、一人で…世界の中に消えていった。」
語り部の言葉に、二人は一瞬身震いをする
…俺が“チーム”の奴と向き合えたのは
支えてくれて、一緒に戦ってくれた仲間がいたから
だけど空さんにはそんな人は居なくて
どれだけ…強い人だったんだろう…
「柚歌はずっと空を巻き込んでしまった罪悪感を抱いてる。
これが、彼女が抱える心の闇…。消えることのない、永遠の闇。」