名前の無い物語


嫌なものを思い出すかのように
駿河は溜め息を吐いた



「今思い出しても、奴が憎い…。」


突然巻き込まれた現状を受け止め、全て全てを救おうとしたあの少年


アイツさえいなければ…!!



「あなたに…空の悪口を言う資格なんてない。」 


怒りがこもった柚歌の声
瞳の中の憎しみは…駿河に向けられていた



「あなたが空を…ううん、200年前、あなたが拓を追い詰めなければ、こんな事にはならなかった!!」


あの日


200年前のあの日から



全てが狂い始めたの



「そして今も、あなたは世界を滅ぼそうとしてる!!空が命懸けで護ってくれたこの世界を…未来に歩き始めた世界を、あなたの思い通りになんてさせない!!!」



ーー俺は世界を終わらせないーー



帝国軍から逃げる途中に告げた、空の言葉
それが頭に浮かんだ



ハァ、ハァと息を切らす柚歌に対して
駿河はまた溜め息を吐いた



「…何か、勘違いをしていないか、柚歌?」








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