名前の無い物語
「立ち止まってる…?私が…?」
「そうだよ。今の柚歌は過去に囚われて、自虐的になってるだけじゃねぇか。
空さんを巻き込んだって言うけど…じゃあ柚歌は、今回の旅で巻き込まれて人生を狂わされたとでも思ったのか?」
「っ…。」柚歌は唇を噛み締めた
それは…
「違うだろ?じゃあ何で空さんの事はそう思うんだよ?空さんは、そんな事気にするような人なのか?」
吉野の言葉に
柚歌は何も言わない
いや、言えない
「柚歌を追い詰めて、罪を背負わせたのは駿河でも空さんでもない。柚歌…お前自身だ。」
巻き込んでしまったと、勝手に思い込んで
悩んで、後悔して
そして…自分自身に罪を背負わせた
実際、巻き込まれた張本人はそこまで気にしていないのに…
「…吉野…。」柚歌の瞳に
初めて、迷いが映った
「…もう、自分を追い詰めるのは止めろよ、柚歌。」
過ちだとか、罪だとか
自分で課した、その罰から
「過去でなんかで立ち止まってないで…自分の足で、自分の意思で、新しい世界を見つけるために歩き出せよ。」