名前の無い物語

柚歌はゆっくりと
吉野に背を向けた


「…空。」


楽しそうに笑っている三人
その中心にいる、大切な人



繋いだ手を離したあの瞬間
空…君は何を思ったの?



「吉野。」クルリと柚歌は振り返って
視線が交わった


「私…生きたい。」



必死に出した、柚歌の答え



「闇になんて堕ちたくない。デュアンテなんかになりたくない…。
空と一緒に…生きていたい。」


こんな所に空はいない
そんな事…簡単に分かる筈なのに


何で私は気づかなかったんだろう?



「柚歌っ!」


差しのべた、吉野の手
柚歌は必死に手を伸ばして、その手を握った



空…


私、ようやく前に進めたよ?



瞬間、光が視界を覆った






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