名前の無い物語
「何だよ、柚歌。」
日が沈みかけている夕暮れどき
街一面を見渡せる丘の公園に、柚歌と草薙彰の姿があった
頭にはてなマークを浮かべている彰に対し、柚歌は柵に凭れると
「覚えてる、彰?」柚歌は彰の方に振り返った
「私達の心の中にいる…『彼』のこと。」
彼
間宮空
柚歌の言葉に、空気は一気に変わった
彰は一度溜め息を吐く
「…覚えてる訳じゃねぇけど、たぶん…俺は知ってる。」
時々視る夢
顔も名前も解らない『誰か』と、俺達は笑い合っていて
そうまるで
友達のように…
「ソイツ…俺達のダチなんだろ?」