名前の無い物語
手を掴んだ瞬間
階段から聞こえた柚歌を呼ぶ声
「彰…!」
草薙彰は、驚いた顔をすると
柚歌に向かって走っていく
「お前、どこ行くつもりだよ!?」
「彰…。」息を切らしながら走る彰を見て
柚歌は俯いた
「っ、ハァ…ハァ。」彰は手を伸ばす
もうちょっとで、柚歌を掴める筈だった
「…ごめん、彰。」
柚歌から出た言葉に
彰は足を止める
「今まで黙っててごめん。秘密にしててごめん。私は今、初めて自分の意思で世界を救いたいと思ったの。帰ったら全部話すから…だから…。」
「柚歌…。」段々と離される、彰との距離
柚歌は彰の目を見て
「必ず、帰るから!!」
涙を流しながらそう叫んだ柚歌
彰はそんな柚歌を見上げて
親指を立てた
彰のその合図を見て、柚歌は涙を拭って
同じ合図を彰に返す
必ず帰るから
だから、待ってて…?
柚歌は光の中に消えていった