名前の無い物語
「クソ…見失った!!」
切れた息を整えながら
海は辺りを見渡した
「やっぱり、土地勘が無いと不利ね。」
「あぁ…。吉野の行きそうな場所だって知らねぇし。」
葵の…『千里眼』の輝石さえあれば
吉野を見つけ出す事くらい簡単なのに…
「そういえば…さっきの人達って、吉野のクラスメートだよね?」
「みたいだな…。友達って訳じゃなさそうだけど…。」
実際、あの後藤彩夏って奴以外忘れてたっぽいし
てか、クラスメート忘れるって普通あり得るのか?
いくら仲が悪くても…存在を忘れる事なんてないだろ?
「彼らなら、土地勘もあるし、吉野の行きそうな場所も知ってる可能性もあるわ。」
「際どいけど…闇雲に走り回るよりは良いかもな。」
さっきの奴等は、こっから真っ直ぐ歩いていった
俺達を隕石だと思ってあの公園に来たみたいだし…そう遠くはない筈
「行こう。」
「あぁ。」
チラリ、と辺りを見渡しながら
二人は走り始めた