名前の無い物語
車が通る橋の歩道
吉野は、川を眺めていた
…柚歌と海とはぐれた
いや、俺が勝手に走り出したんだから俺のせいなんだけどさ
二人共怒ってるだろうなぁ…?
溜め息を1つ吐いて
吉野はまた川を眺める
ーーもしかして…滝川君?ーー
あの時の後藤彩夏の顔が頭から離れない
まさか俺の名前を知っているとは思わなかったし
俺の存在を知っていた事も思ってなかった
俺自身も他人に興味無かったし、それでいいとずっと思っていた
だけど…あの時
名前を呼ばれた、あの時
「何で…動揺したんだ…?」