名前の無い物語
高校入学してからすぐ
藤澤さんは俺の目の前からいなくなった
藤澤さんと過ごした日々は
たぶん…一ヶ月も無かったと思う
だけど…俺の人生の中で一番長かったと思う
「本当の俺を、『俺』は受け入れられると思いますか?」
本当の俺を取り戻したとき
『俺』は…俺を受け入れられるのか
分からない
今までの俺が築いてきたものなんて、何も無いと思っていたのに
後藤彩夏
彼女と…今日会うまでは…
怖かった
初めて、他人と自分は関わっていたと知って
関わっていて尚、みんなの中で俺が立っている場所を悟って
怖くなったんだ
「どうせなら…本当に存在を消してくれれば良かったのに…。」
「そんなの無理。」