名前の無い物語
「!」吉野は立ち上がって咄嗟に振り返る
誰もいない…そう思っていた筈なのに
吉野の視界には、さっき橋で会った少女の姿があった
「お前…何で…!」
「自分の存在を消して欲しい、か。そんなの無理だよ。君が人である以上ね。」
「?」吉野は首を傾げた
その様子に、少女はクスリと笑う
「『人』という字は、互いに支え合って出来ている。」
「っ!その言葉…!」
ーーいいかい吉野君?『人』という字は、互いに支え合って出来ているだろう?だから人は一人では生きられない。
君もみんなも…気づかない内に支え合って生きているのだよーー
藤澤さんが
藤澤さんが…いつも俺に言っていた言葉
「君がどう思おうが勝手だけどさ、彩夏ちゃん達は君を支えてたんだよ?
君がクラスから消えないように…気づかない位然り気無く。
じゃあ、次は君の番じゃない?」