名前の無い物語
「え?」吉野は首を傾げた
俺が…?
「いや何か…この世界に来てから、吉野が遠くに感じてさ。」
「海…。」
答えるように、柚歌もギュッと抱き締める力を強めた
海…柚歌…
「…心配かけてごめん。」
今気付いた
今まで、俺には心配かける相手も心配してくれる友達も居なかった
藤澤さんが死んでから…本当に一人で生きてきたんだ
だけど…
俺には今…海と柚歌がいるから…
「どこにも行かねぇよ。二人が、俺を覚えててくれている限り。」
俺の居場所を、与えてくれて
本当に、ありがとう