名前の無い物語
「え?」吉野は顔を上げた
「最初に会った時より、吉野は明るくなったと思うわ。」
「俺は、今のお前の方が好きだぜ?」
笑って言う二人に
吉野は照れ臭そうに頭を掻いた
ーーそんなに焦んなくても大丈夫だってーー
ーー吉野は吉野のペースで進んだらいいのよ?ーー
瞬間浮かんだ、いつもの光景
どこか懐かしいその声に
吉野はもう何も取り乱さなかった
「…ありがとう。」
藤澤さん
あんたが言ってた…『人』の字の意味
やっと俺にも、分かる気がする
悔しいけど俺は
この二人だけは…手放したくないって思うんだ