名前の無い物語
+繋ぐ友情バトン
目覚まし時計が鳴るより少し早めに
吉野は目を覚ました
隣には海と、ベッドには柚歌が寝ている
それを見た後、起こさないように吉野は起き上がった
カッターシャツに腕を通して
いつものように適当にネクタイを結んで
適当に髪をセットする
それから手に取った…花形のお守り
ーー例え道に迷ったとしても、必ず戻ってこれるようにーー
そう
そう言って…『彼女』は『俺達』にこれを渡した
確かに…そうだった
吉野は一度首を横に振って
いつも通りズボンのベルトの所に引っ掛ける
教科書なんて全く入っていない鞄を片手に
吉野は玄関に向かう
そこで、海と柚歌の方に振り返った
「…俺、向き合ってくるよ。」
今まで逃げてきたものに
目を反らしてきたものに
「…行ってきます。」
パタリ、と扉は閉まった