名前の無い物語
「残りの、心?」知らない筈なのに
何故か吉野の心臓が、ドキンと胸うった
「記憶というのは儚いものじゃ。心が壊れれば記憶も壊れ、心によって記憶の欠片は結ばれる。」
ドキン、ドキンーー段々鼓動は速くなる
「まぁ、ここまで心を回復させたのは素晴らしいがな。
さすが、わしが目をつけた『器』じゃ。」
ーー逃げろ!ーー
頭に響く声
見覚えの無い映像
「聞こえているじゃろう?本当の『お主』からの声を。」
ーー逃げて、吉野!ーー
鼓動が速くなる
少なからず、吉野の足は震え始めた
「それとも…お主の心に眠る友人がお主の邪魔をしているのかのう?」
ーー陽人、伊織っ!ーー