名前の無い物語
「!」予想外の出来事に、黒蘭は後ろに飛んで間合いをとる
爆音で意識を取り戻した海も、目の前で起こっている出来事に呆然としていた
舞う土煙
爆発する要素など…どこにもなかったはずなのに
「一体、何が…。」
「っとに、無茶ぶりが激しすぎんだっつーの。」
突然聞こえてきた声
この場にいる全員とは違う、新しい声
だけど、その声に
柚歌だけは、目を見開いた
「やっと戻れたかと思ったら、今度は世界を越えた争いとはな…。まぁ、そんな話聞いてませんでした的な事はもう慣れちまったけど。」
聞き覚えのある、その声
いや…忘れる筈はない
けれど…ここに存在している筈も無い
溢れてくる疑問に、答えは見つからないまま
柚歌は声の方に振り返る
この空間に繋がっているような、洞窟
そこから…一人の少年がコチラに向かって歩いてきている
茶髪に、柚歌と同じ制服を身に纏った少年
少し幼げに見えるその姿は…吉野と同い年と感じられた
嘘…
何で…?
「空…?」