名前の無い物語
震える柚歌の声に
少年ーー間宮空は応えるように微笑んだ
瞬間また柚歌の内に溢れる、沢山の疑問
何故彼はここにいるのか
世界の中に消えた筈では無かったのか
いろんな感情が渦巻いて、柚歌は一瞬目眩を感じた
「っ!」何の前触れも無く、いきなり吹く突風
あまりの強さに三人は目を細めた
…この風!
感じた事のある風に、海は目を凝らす
風が吹いている方向…そこに、さっきまでは無かった無数の人影
まだ高校生くらいの面影
そして、全員が海と同じ制服を身に纏っている
アイツの風で、ここに来たのだと…すぐに海は分かった
「…海?」