名前の無い物語

「何で葵まで…。」

医療班班長として、柚璃がここにいるのは分かる

けど、葵は何故ここに?


海の言葉に答えたのは柚璃だった


「今回、みんなを読んだのは医療班ではないわ。…葵よ。」

「え?」海は目を丸くした
隣にいる華は心配そうに海を見つめる


「…華、悪いけど…席を外して欲しい。」


申し訳なさそうに告げる葵
そんな葵の様子を見て、華はニコリと笑った


「…分かった。先に教室に帰ってるね。


「ごめんね、華。」

謝る葵に、華はもう一度明るい笑顔を浮かべた

「吉野君、早く目が醒めたらいいね。」

海達にそう明るく行って
華は扉に向かって歩き出す

彼女が強がっている事は、海にはすぐに分かった

今回、席を外す事に対してじゃない
華はきっと分かってる
吉野が目を醒ませば…俺達がまた旅立つことを…

きっと、それを恐れてるんだ…


「…ごめんな、華。」小さく呟いた海の言葉は
誰にも聞かれることは無かった


華が出ていったのを見て
葵は四人に視線を向ける


「…皆を読んだのは、吉野君について話すことがあったから。」

空気が変わる
皆真剣な表情を向けた

「…吉野君の心が壊れた事について、どれだけ知ってる?」




< 372 / 595 >

この作品をシェア

pagetop