名前の無い物語

「うわっ!」突然視界に入った姿と、耳に届いた声
吉野は咄嗟に起き上がった

後ろを振り返ると
そんな吉野の反応にクスクスと笑っている…一人の女性

「ビックリした…。驚かすなよ伊織。」

「ごめんごめん。吉野全然気付いてなかったから…。」

アハハ、と亀岡伊織は笑い続ける
そんな伊織の様子を見て、吉野は溜め息を吐いた

「それに何だよ子供って。伊織だってまだ未成年だろ?」

「15歳の吉野よりは大人ですから。」

自慢気に言う伊織に
4つしか変わらないくせに、と吉野は内心呆れた

「それより、何してたの?こんな遅くに。」

「さっき部屋から流れ星が見えたんだ!だから星を見にさ。」

吉野が指差した先には
満点の星空が伊織を迎える

「本当だ!綺麗…。」

「だろ?だからこの事は内緒なっ!」

吉野達の世界では、深夜での18歳以下の外出は禁止されている

バレたらまた怒られる、と吉野は後で付け足した


「しょうがないなぁ。本当に吉野って好奇心旺盛だよね。」

「何だよその言い方…。」

拗ねる吉野に
伊織はまたクスリと笑った

「そこの未成年男子と仲間の女。何してる?」







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