名前の無い物語
二人はお互いの顔を見合わせた
その間にも、伊織は笑い続けている
伊織につられて
吉野と陽斗も、次第に笑いが込み上げてきて
丘の上に、三人の笑い声が響き渡った
キラリと輝く星空の下
三人は本当の兄弟のように
楽しそうに
幸せそうに
今、この瞬間を…生きていた
「てか、もうそろそろ帰らねぇとヤバそうだな。」
陽斗の言葉を合図に
吉野と伊織もようやく気付いた
あまり遅くなりすぎると、それこそ大人に見つかったら面倒だ
「そうだな。」三人は立ち上がった
「明日絶対行くから、就任式!」
「あー分かった分かった。」
「フフッ、張り切りすぎて寝坊しないでよ?」
伊織の言葉に「分かってるって!」と念を押して
吉野は御守りをポケットに仕舞う
「じゃあまた明日!」
二人に手を振って
吉野は帰路についた
三人で笑い合えるのが
これで最後だとも知らずにーーー