名前の無い物語
「「!!」」
聞こえてくる筈の無い、嫌な声
二人は咄嗟に修練場に視線を送った
階段の上の、扉の前
そこに…陽斗を担いだ、鎖邊の姿があった
「博士っ!?」
「何で…陽斗、陽斗は…!?」
こんなに早く追い付いてくるなんて…
それは伊織にとって予想外の出来事だった
フッと怪しい笑みを浮かべて
鎖邊は吉野に視線を送る
「こやつはお主の大切な友達じゃったの…。返してやろう。」
そう言って
ヒュッと担いでいたモノを吉野達に向かって投げた
咄嗟の事で動けなかった二人の目の前に
転がる…大切な『友達』
「はる、と…?」
「…っ!!」