名前の無い物語
目の前で倒れているのは
血まみれの…陽斗
「陽斗っ!」
我に帰った伊織は
すぐに陽斗のそばに駆け寄る
「陽斗、しっかりしなさい!」
どこを見ても出血が酷い
致命傷は?
まだ間に合うか?
ううん…間に合うに決まってる
ポゥと伊織の手から光が現れ、陽斗を包み込む
元から魔法重視だった伊織が陽斗に治癒魔法をかけたのだ
お願い陽斗…目を開けて
そんな光景を
吉野は起こっている事が理解出来なくて
ただ呆然と眺めていた
「無駄じゃ。もう遅い…そやつはもう死んでいる。」
鎖邊の冷たい言葉に
吉野は反応した
死んだ…?
陽斗が…?
瞬間、吉野の体が徐々に震え始めた
何で震えてるんだ?
怖い…のか?
鎖邊の視線を遮るように
伊織は治癒魔法を止めて
ゆっくり立ち上がった
「…許さない。」