名前の無い物語
鎖邊を睨む伊織の瞳
そこには…十分過ぎるくらいの怒りが写っていた
「お前は絶対に許さない…鎖邊っっ!!」
瞬時に剣を握って
伊織は鎖邊に向かって跳んだ
一瞬で辿り着いて
すぐさま剣を振り下ろす
ここまで…一秒も経っていない筈なのに
キィン、といつ握ったか分からない剣で、鎖邊は伊織の攻撃を受け止めていた
「…そう熱くなるな。こんな事で我を忘れ判断を見謝るとは…。マスター失格じゃな。」
ニヤリ、と鎖邊は怪しそうに笑って
そこからは…まるで一瞬の出来事だった
吉野には、何も動きを捉えることは出来なかった
只、気が付けば
ついさっき鎖邊に向かっていった伊織が…血を出しながら
吉野に向かって飛ばされていた
「伊織…?」