名前の無い物語
鎖邊は自分の目を疑った
吉野は闇に堕ちた…そう確信していた筈なのに
突然、吉野の叫び声と共に放たれた強大な光
そして何かが割れたような強烈な音
それと同時に
吉野はその場にうつ伏せに倒れていった
「…。」
カツ、と足を進めながら
鎖邊の視線は吉野に向いていた
「…闇に打ち勝ったか。」
倒れている陽斗と伊織の間を通って
横たわる吉野の下に辿り着く
「何が原因かは分からぬが…闇に堕ちる瞬間、自身の全ての光の力で闇を封印するとはな。」
そんな神業、誰もが出来ることではない
強大な光の心を持つ吉野だから
咄嗟にできた事だろう
…だが
「その反動で、自らの心を破壊した…。」
何事でも、強い力を使うにはそれなりの代償がある
確かに、闇に堕ちなかった為にデュアンテは生まれなかった
だかその代わりに…吉野の心は、半分以上壊れてしまった
恐らく、もう使い物にはならなだろう
そう判断した鎖邊は、足で吉野を転がして仰向けにさせる
光を宿していない瞳
ここからは…賭けに出よう