名前の無い物語
キィンと音を立てて
鎖邊の右手には剣が現れる
その切っ先を
吉野の胸に向かわせた
その剣から現れた光
その光を受けた瞬間、吉野の表情は無意識に苦しみだした
「っ…ぁ…!」
「壊れてしまった心、崩れたバランス。もう二度とあんな奇跡的な心が1つの体に宿ることは無いじゃろう。
だから…心を2つに別けよう。」
パァンと光が弾け飛ぶ
そこから現れたのは
新たに現れた…一人の少年
「滝川吉野の片割れ…闇を司りし者。今日からお主は、『黒蘭』と名乗るが良い。」
少年ーー黒蘭は地に足を着けると
片膝を着いて「御意。」と一言告げた
満足げに頷く鎖邊は、チラリと吉野の方を見る
「…この衝撃で、更に心は壊れたか。もう自我を取り戻す事もあるまい。」
もう心が完璧に治る事も無いだろう
だが…
「お主なら…再び心を復活させ、わしと再び見える時が来ることを信じておるぞ。」
分かったか、吉野?
それだけ言い残して
鎖邊と黒蘭は闇の中に消えていったーー