名前の無い物語
「っ…く…。」
痛む体、薄れる意識
その中で…伊織は地面を這いつくばっていた
少し離れた所に横たわっている
光を失った…吉野
「…よし、の…。」
護れなかった
大切な友を
何よりも大切だった…皆を
チラリと伊織は視線だけを空に向ける
そこには、先程伊織が開いた異空への扉があった
まだ…このまま死ぬ訳にはいかない!
ようやく、飛ばされていた剣の下に辿り着き
ギュッと握ると、剣から丸い光が現れる
ーー伊織、陽斗。もし私が死に、この世界に危機が迫った時は…この世界を封印しろ。
この世界は光と闇との狭間に位置する。もしかしたら悪い輩に利用されてしまうやもしれん。
それを阻止するのは我々マスターの務めだ。躊躇いなど要らん。
すぐに…この世界を閉じろーー
必死の思いで立ち上がって
伊織は空に剣を掲げる
そしてそのまま
虹色の光を空に向かって放った
瞬間的に起こる地響き
青一色だった空がわ灰色に包まれていく
光が…消えていく
封印される、この世界は…
そう悟って、伊織はすぐにもう1つの光を吉野に向けた
光が吉野の下に飛んでいって吉野を囲んだかと思えば…その体を浮かせた
「…この世界には、あなたを救ってくれる…あなたを想ってくれる人はたくさんいるわ。」