名前の無い物語






目を開けて最初に見たのは
見覚えの無い天井だった


「…ここは…?」

まだボーッとする意識の中
吉野はゆっくり起き上がった

少しだけ開いた窓から入るそよ風
自分が置かれている現状を何一つ分からなかった

只1つ、わかること

吉野はベルトに着けていた御守りを手に取る


ーー俺達の夢だーー


ーーいつか三人で…同じ任務を受けれたらいいねーー


頭に浮かぶ
今は亡き、大切な…友の笑顔


「陽斗…伊織…。」


大切な人だった
俺の世界の…中心にいた

なのに、その命を奪ったのも
その幸せを奪ったのも

俺なんだ…


「ごめん…ごめんな…。」

泣きたくて泣きたくて仕方無いのに
何故か涙は一粒の溢れて来ない

あぁそうか
俺には…もう心が無いのかーー


「~。」

「!」

外の部屋から聞こえる話し声

海…?

どうやら海達は部屋の外にいるらしい


ーー再び見えると信じておるぞーー







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