名前の無い物語











「…そうか。」

意識が帰ってきて
海はそう呟いた

葵の輝石を通して視た…吉野の過去
吉野の過去は…確かに俺達が思っている以上に、辛いものだった

「そりゃ、記憶を失って当然だよな。」

「えぇ。目の前で、大切な人を失ったんだもの。」

目の前で、大切な人を失って
平気でいられる人なんてきっといない

特に…幼かった吉野には…


「これが吉野君の過去だよ。あなた達は、この事実も踏まえて…これから戦っていかなければならない。」

葵は正しい

黒幕は…鎖邊で間違いない

けど、鎖邊は吉野の心を2つに分けた

なら、オーバードライヴは…?


「吉野に会おう。」

そう提案したのは
海だった

「今一番辛いのは、吉野だ。なのに…俺達が辛い顔してちゃダメだろ?」

アイツを支えなければ
不幸のどん底にいる…アイツを

「そうね。」

「賛成。」

三人はそう頷き合って
空は奥の扉を開けた













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