名前の無い物語
海のその言葉に
誰も何も言わなかった
「吉野は不安がってんだ。たぶん、陽斗さんや伊織さんみたいに…俺達が目の前から消える事を恐れてる。」
きっと、友達が死んだのは自分のせいだと思って
俺達から離れる気だ
「確かに葵の能力で視たほうが楽なのはわかってる。だけど、それじゃダメなんだ。」
アイツの傷を癒すには
それじゃ…ダメだ
「俺達が見つけねぇと、この先誰が吉野の事分かってやれんだよ!!」
一人孤独に堕ちた吉野に
俺達が出来ることは…それしか無い
「海…。」葵と柚璃は納得したように
ニコリと笑った
ポン、と海の肩に手がおかれる
「そうと決まったら、早く行こうぜ。」
「吉野きっと…待ってるよね。」
迷いの無い空と柚歌の瞳
その瞳に、海は力強く頷いた
「吉野の奴、学園内で俺から逃げられると思うなよ?」
何度ここを走り回ったと思ってんだ?
面白そうに笑って
三人は医務室から走って出ていった