名前の無い物語
「!」声に吉野は顔を上げる
そこに居たのは、息1つ乱さずに吉野を見つめる
海達の姿があった
「っ、何で…!?」
何でここが分かったんだ?
土地勘の無い吉野でも分かるくらい、ここの敷地内は広すぎる
なのに、こんな容易く見つけられた
「ここ、俺の世界だし。今まで何回ここを走り回ったと思ってんだよ?」
鬼ごっこやら、突然の招集とか
更には寝坊して教室までダッシュしたし
この広い学園でさえ
もう海にとっては庭も同然だった
「酷いよ、いきなり居なくなるなんてさ。」
「…ごめん。」
柚歌の言葉に
吉野は謝罪をしながら俯いた
「ったく、迷子にでもなったらどうするんだ?」
「…んなのならねぇし。」
空の冗談にさえ
返す声は小さくて
三人には、吉野が悩んでいるのは簡単に分かった
「とりあえず、医務室に帰るぞ?葵と柚璃が待って「ダメだっ!」